ザ オルソ ペリオ ペイシェント
矯正&ペリオ患者のための 臨床エビデンスと治療ガイドライン
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出版社 | クインテッセンス出版株式会社 |
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書籍名 | ザ オルソ ペリオ ペイシェント 矯正&ペリオ患者のための 臨床エビデンスと治療ガイドライン |
編 | Theodore Eliades/Christos Katsaros |
監訳 | 綿引淳一 |
訳 | 市川雄大/小野理恵子/小池紗理奈/行田長隆/榊原毅/佐久間優弥/笹生宗賢/田代慎/内藤聡美/野瀬佳奈/平沼貴大/和田明大 |
定価 | 16,500円(税込) |
特別価格 | 14,850円(送料無料) |
発売日 | 2023年11月10日より順次 |
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書評
本書は矯正歯科界の大家である故Vincent G. Kokich先生が考案された後に、矯正と歯周病分野をリードする臨床家と研究者が協力し、最新の論文に基づいてまとめられた書籍である。そして、この分野においてもっとも精通する臨床家の一人である綿引淳一先生が監訳されたことでも注目を集めている。
日本歯科医師会から8020運動が推奨されて35年余りが経過するが、8020達成者の多くは歯列と咬合が正常または安定していると報告されており、中高年を含む幅広い年齢層に矯正治療の重要性が唱えられている。
一方で成人矯正患者の多くは何らかの歯周疾患や歯肉歯槽粘膜の問題を抱えており、積極的な矯正治療が歯周組織に良くも悪くも大きな影響を及ぼすため、付着の喪失や歯根近接、歯肉退縮などの偶発症に留意する必要がある。実際、評者の医院においても矯正治療中または治療後に歯肉退縮を主訴に来院される患者が後を絶たない。また、すでに歯周病が進行している患者には、徹底したプラークコントロール、歯周組織再生療法、ポケット除去療法、咬合の管理、歯周形成外科などが必要になり、これらの処置をどのタイミングで行うのかも重要になる。
本書は歯科矯正学と歯周病学の相互作用に関連する口腔生理学の基礎から始まり、歯周病学的考慮事項として矯正患者に対する歯周検査について記載しており、歯肉退縮の疫学から治療法にいたるまで美しい症例写真とともに詳細に術式が解説されている。また、口蓋の拡大装置の歯周組織への影響や臨床的歯冠長延長術など歯周病患者に携わる臨床家にとっては必須のセクションとなっている。犬歯の正しい発育や萌出および最終的な位置は、適切な咬合、機能、審美性にとって必要不可欠なものであり、上顎埋伏犬歯への対応はさまざまなものが紹介され非常に興味深い内容となっている。
そして、歯周病患者に対する矯正学的考慮事項として矯正治療が歯周組織に及ぼす影響についてヒトを対象とした質の高い臨床研究から得られたデータがまとめられている。歯周病患者にみられる支持骨の喪失は歯の移動をまねき、歯槽骨欠損によるダメージを軽減するために適切な咬合接触を再確立させる必要がある。
しかし、活動期の歯周病患者に矯正治療を行うことは望ましくないため炎症のコントロールが必須となる。歯の移動に必要な力のレベルは、歯周病に罹患した歯の場合、一般的な規則は適用できず、歯根膜を介して歯に付着している骨表面の量を考慮して力のレベルを調整する必要がある。とくに重度歯周病患者の矯正治療を行うタイミングは長年の課題であったが、歯周形成外科後や歯周再生療法後の矯正治療のタイミングも最新のエビデンスにより明確になってきた。
本書をとおして多くの矯正医、歯周病医がお互いの知識を深め、OrthoとPerioの連携によって日本国民のさらなる健康増進が達成されることを期待している。
評者:瀧野裕行(京都府・タキノ歯科医院)
- 朝日大学歯学部 歯周病学講座 客員教授
- 東京歯科大学 歯周病学講座 客員講師
- 日本先進医療研修機関(JIADS) 理事長
- OJ(Osseointegration Study Club of Japan)会長
- 日本口腔インプラント学会 会員
- 日本臨床歯周病学会 会員/認定医
- AAP(American Academy of Periodontology) 会員