ー矯正治療が必要な歯並びとその難しさー
患者さまが矯正歯科治療を希望されるのには、様々な理由があります。
歯並びを綺麗にしたい
虫歯になりにくくしたい
健康的な歯を長持ちさせたい
などが挙げられます。
また、矯正治療の必要な不正咬合(正常ではない噛み合わせ)の種類も同じように様々で、その治療の難易度も症例ごとに異なります。
実際に、矯正歯科治療の必要性とその難しさについては、イギリスやヨーロッパの国々で多く審議されています。その理由として、矯正治療の保険適応が挙げられます。イギリスやヨーロッパのいくつかの国では、歯並びの状態によっては矯正治療が無料、もしくは保険治療の範囲内で受けることができます。
現在の日本では、先天的な疾患や、手術の必要な顎変形症(顎の大きな歪みや重度な受け口・出っ歯)の方では矯正治療が保険適応となりますが、一般的には自費の診療となります。
では、どのようにして矯正治療の必要性やその難しさを決めているのでしょうか。
イギリスでは、1989年より”Index of Orthodontic Treatment Need (IOTN) ”と呼ばれる指標を基準に、歯並びの状態を得点化して評価し、保険治療の適応かどうかを決定しています。この指標には、審美面と健康面(機能面)が含まれているものの、どちらかというと審美面の比重が重い形となっています。
しかし、一見して綺麗な歯並びであっても、専門的な立場で見ると矯正治療が必要と思われる方がたくさんいらっしゃいます。これは、海外に限らず日本でも同様です。
すなわち、審美的な面だけではなく、機能的な側面も評価をして診断・治療計画の立案を行うことが非常に重要です。
そのため、治療前にしっかりとした検査をすることは必要不可欠になります。そういった観点から考えると、昨今SNSなどでよく見かける写真撮影や型取りだけで簡単にできるマウスピース矯正治療などは、慎重に検討する必要があるかもしれません。
日本でも、残念ながら本当に良い矯正治療はまだまだ知られていないのが現状です。
では、どうしたら自分の歯並びや噛み合わせについて正しく知ることができるのでしょうか。
一度、歯科医院を訪れて歯科医に歯並びをチェックしてもらうことが一番です。
多くの歯科医院では矯正治療の相談を行っています。
実際に矯正治療を進めるには、いくつかの検査が必要になります。
歯並びがコンプレックスになっていたりすると、1日でも早く治療を始めたい!と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、適切な治療を行うためにも治療前の検査も焦らずにきちんと受けましょう。
精密な検査および分析に基づいた治療計画を立案し、詳細で丁寧な説明を行う歯科医院で相談・治療されることをお勧めします。
私たち包括的矯正歯科研究会(IOS)は、国際的なエビデンスに基づき、矯正歯科治療の正しい知識と正確な情報を一般の方々から歯科医師まで幅広い層へ向けて発信してまいります。
参考文献:
1.The development of an index of orthodontic treatment priority. European Journal of Orthodontics, Volume 11, Issue 3, August 1989, 309–320.
2.The Development of the Index of Complexity, Outcome and Need. Journal of Orthodontics. Volume 27, 2000, 149-162.