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大人の矯正治療前には歯周病検査が必須の時代に!

最終更新: 2019年10月19日



「矯正治療はどこで受けたら良いの?」


矯正治療を受けようと考えている皆さんが一番悩むところではないでしょうか?

とりわけ、大人の矯正治療については、歯並びや咬み合わせの問題以外に被せ物や歯茎の問題など、様々なお口の中のトラブルが複雑に関係していることがあります。そのため、よく考えて歯医者さんを選ぶことが重要となってきます。

しかし、コンビニの数より多いと言われている膨大な数の歯医者さんの中から何を基準に選んだら良いのか分からない、というのが現状だと思います。


 そもそも矯正治療を受けようとしている成人患者さんの口腔内にはどのような特徴があるのでしょうか。

そこで我々IOSのメンバーは、特に日本人での罹患率が高い歯周病に着目し、これから矯正治療を受けようとする成人患者さんがどのような歯周疾患(歯茎の病気)にかかっているのかを検証するべく、矯正治療を行う前の成人患者さんの口腔内の健康状況を調査しました。

※今回の調査は矯正治療を目的に受診した20~40代の患者さん81名を対象とし、レントゲン調査や歯周疾患検査を行いました。


【調査結果】

 厚生労働省が5年に1回行っている歯科疾患実態調査(平成28年度)と比べ、矯正治療を受けようとしている成人患者さんは


◆歯肉出血を有する者の割合がいずれの年代においても多い

◆深い歯周ポケット(歯と歯茎の境目の溝)を有する者の割合がいずれの年代においても多い


という特徴が見られ、歯周疾患の罹患率が高くなっていることが明らかとなりました。

また、一般的に歯医者さんでの専門的な治療が必要と言われている4mm以上の歯周ポケットがある人は25歳以上では半数を超え、更に重篤な6mm以上の歯周ポケットがある人は30代では半数を超えていました。

これらのことから、25歳以上の患者さんにおいては、矯正治療を行う前に適切な歯周疾患の検査ならびに初期治療が必須であるとともに、30代以降ではより重篤度が高いため注意が必要であることが明らかとなりました。

さらに歯並びや咬み合わせとの関係性をみると、4mm以上の突出を持つ患者さん(いわゆる出っ歯な歯並び)においては下あご奥歯の歯周ポケットが深くなりやすい傾向があることが判明しました。

以上のことから、25歳以降の成人患者さんで矯正治療を考えられている方は歯周疾患の罹患率が高い傾向があるため、矯正治療を行う前に適切な歯周検査や歯周治療行う必要性があり、特に前歯が出っ歯となっている方では注意が必要であるということが明らかになりました。


「歯列矯正」と聞くと、ただ歯並びを矯正するだけ、というイメージを持っている方も少なくないでしょう。ですが、矯正を行う前に歯周病などのお口のトラブルを確認し解決してからでないと、矯正治療を行う途中でさらに新たな問題が発生する可能性があります。

矯正治療前に患者さんの口内環境をきちんと説明し、歯周病検査の提案、初期治療をしっかり行ってから治療をしてくれる歯医者さんかどうかが、矯正歯科を選ぶ上でのひとつの目安になってくるかもしれませんね。



【歯科医師の皆様へ】

<目的>

 近年、成人における矯正治療のニーズは増加しており、それに追随して歯周疾患に罹患している患者へ矯正治療を行う機会が増加している。しかしながら、矯正専門医による歯周疾患検査は不十分なことが多く、適切な歯周初期治療がなされないまま矯正治療中に問題が発生することも多い。そこで本調査では矯正を主訴に来院した患者の歯周疾患状態を調査することにより、矯正治療前の適切な歯周疾患検査ならびに歯周初期治療の重要性を明らかにすることを目的とした。


<材料および方法>

 矯正治療を目的にアクア日本橋デンタルクリニックを受診した20~40代の患者81名に対し、X-P、歯肉出血(BOP)、歯周ポケット(PPD)、分岐部病変の有無などにより歯周疾患の評価を行った。BOP、PPDに関しては2016年の歯科疾患実態調査と比較を行い、また不正咬合との関係を評価するためにoverjet、overbite、叢生量との関連を統計学的評価(Mann-Whitney U-test)により検討した。


<結果>

 歯肉出血を有する者の割合は98.2%で、いずれの年代においても歯科疾患実態調査に比べはるかに高かった。また、4mm以上の歯周ポケットを有する者の割合はいずれの年代においても歯科疾患実態調査に比べて高くなっており、年代とともにその割合は増加した。25歳以降で4mm以上のポケットを有する者の割合は50%を超え、6mm以上のポケットを有する者の割合は30代で50%を超えていた。以上のことから矯正治療を希望する患者においては、歯科疾患実態調査と比べて歯周疾患罹患率は高くなっており、25歳以降の患者の半数において歯周初期治療が必須であり、更に30代以降の患者ではより歯周疾患の重篤度が高くなっていることが明らかになった。

 不正咬合との関連を見ると、歯肉出血に関してはoverbite、overjet、叢生量のいずれも相関が認められず、歯周ポケットの深さに関してはoverbite、叢生量は相関が見られなかったが、overjetに関してはノーマルのoverjetを有する者に対して4mm以上のoverjetを有する者で下顎臼歯の歯周ポケットが深くなる傾向が認められた。

 叢生量とBOP、PPDに関しては今回は残念ながら有意差が出なかったが、叢生の厳しい部位は正確なポケット診査が困難であることなども関係していると考えられるので今後もデータ数を増やして再評価を行っていきたい。


※2019年 ヨーロッパ矯正歯科学会(EOS)にて報告した調査結果


*医学情報には様々意見が存在しております。我々が配信している医学情報は、IOS学術委員が医学的視点から独自に調査した私見が含まれている可能性があります。予めご了承下さい。


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▼執筆者

小野 理恵子

国立学芸大付属高校卒業
東京医科歯科大学 歯学部歯学科卒業
東京医科歯科大学矯正学分野大学院卒業 歯学博士取得
日本矯正歯科学会認定医
AQUA日本橋DENTAL CLINIC 勤務
IOS Central Member & 矯正専門医チーム

“ Teeth Alignment The Specialist” 所属

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